釧路湿原にはどんな生き物がいる?数字で見る全体像
環境省の釧路湿原国立公園の紹介ページによると、釧路湿原には哺乳類39種、鳥類約200種、爬虫類5種、両生類4種、魚類38種、昆虫類約1,100種の動物が生息し、湿原とその周辺で700種以上の植物が見られます。代表的な動物はエゾシカやキタキツネ、希少な種では大型猛禽類のオジロワシ、日本最大の淡水魚であるイトウ、エゾカオジロトンボが挙げられています。釧路湿原国立公園連絡協議会のデータブックも、植物約700種・昆虫類約1,100種・魚類38種・両生爬虫類9種・鳥類200種・哺乳類39種と同じ内訳を示し、「その中には、絶滅の危機にある生物も含まれています」と注意を促しています。
これだけの生き物が暮らせる理由は湿原の成り立ちにあります。環境省によると、釧路湿原は太古には海で、海が後退する過程で多くの湖沼が点在し、その名残が現在も東側に残る塘路湖・シラルトロ湖・達古武湖(海跡湖)です。湿原の約80%は周辺からの流入水で潤されるヨシ・スゲ湿原(低層湿原)とハンノキ主体の植生で、泥炭の堆積で雨水だけに潤されるミズゴケ湿原(高層湿原)にはワタスゲやガンコウランなどの寒地性・高山性の植物が、湖沼群にはヒシやネムロコウホネなどの水草が見られます。釧路湿原は昭和55年に日本で最初のラムサール条約登録湿地となり、昭和62年7月31日に国立公園(面積28,788ha)に指定されました。
湿原そのものの見どころや展望台の回り方は釧路湿原観光の完全ガイド、月別の見頃はベストシーズン記事にまとめています。
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鳥類|タンチョウ・シマフクロウ・ワシ類
タンチョウ(国の特別天然記念物)
環境省によると、釧路湿原を代表するタンチョウは乱獲と環境の変化で減少し、一時期は絶滅したと考えられた時期もありましたが、保護活動により個体数を回復し、現在は釧路湿原を中心とする北海道東部などで見られます。連絡協議会のデータブックでは、羽を広げると2.4mほどにもなる国内最大級の鳥で、道東地区に1,000羽程度生息し、3月〜4月に繁殖期を迎えると説明されています。冬期間は鶴居村の鶴見台や鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリなどで姿を見ることができます。タンチョウの詳しい観察ガイドはタンチョウの記事をご覧ください。
シマフクロウ
連絡協議会によると、シマフクロウはフクロウ類では日本最大で、北海道に130羽程度しか生息していません。環境省が国内希少野生動植物種に指定し、保護増殖事業を行っています。環境省釧路自然環境事務所は、シマフクロウ・タンチョウ・オジロワシ・オオワシ・エトピリカの5種について保護増殖事業に取り組んでおり、希少種の傷病収容の原因の多くは交通事故や鉛中毒など人為的な要因だと公表しています。
オジロワシ・オオワシ・アオサギ・オオハクチョウ
連絡協議会の動植物季節表では、**オジロワシは留鳥(水辺)、オオワシは冬鳥(水辺)、オオハクチョウは冬鳥(水辺・東エリア)**と整理されています。アオサギは3月中旬に釧路湿原へ渡ってきて9月頃まで湿原や周辺の水辺で見られ(一部越冬)、塘路湖畔などにコロニー(集団営巣地)があります。夏鳥ではオオジシギ・オオジュリン(草原・湿原)、アオジ・アリスイ・カッコウ(山野・湿原)などが季節表に載っています。野鳥観察の装備や撮影のコツはバードウォッチング記事と野生動物撮影ガイドが詳しいです。
哺乳類|エゾシカ・キタキツネ・シマリス
連絡協議会のデータブックによると、エゾシカは森林と草原の境界に多く生息し、メスや若いシカは群れをつくり、オスはあまり群れを作りません。冬から春にかけては道路沿いにまで姿を現すため、交通事故に注意が必要です。キタキツネは大きさ50cm〜75cm、尾の長さ30cm〜40cmで、本来は非常に用心深い動物ですが湿原周辺ではかなり目にすることができます。「自然のバランスを崩すことになりますので決してエサを与えないでください」と明記されています。
シマリス(エゾシマリス)は、細岡や温根内の木道などで4月〜10月くらいまで見ることができ、冬の期間は巣で冬眠します。エゾシカやヒグマと出会ったときの安全対策はエゾシカ・ヒグマ対策ガイドにまとめています。
両生類・魚類・昆虫|氷河期からの遺存種
キタサンショウウオ(釧路市指定天然記念物)
連絡協議会によると、キタサンショウウオは氷河期の遺存種で、釧路湿原や北方領土の国後島に生息しています。体長8cm〜12cmで姿を見かけることはまれですが、5月頃に湿原の水たまりなどで青白い蛍光色の卵塊を見ることができます。釧路市公式サイトの文化財ページによると、昭和50年12月12日に釧路市の天然記念物に指定され、環境省レッドリストでは絶滅危惧IB類に区分されています。許可なく捕獲したり生息域を消失させたりする行為は禁止されています(問い合わせは釧路市教育委員会 0154-41-5809)。
イトウ(日本最大の淡水魚)
連絡協議会のデータブックによると、イトウはサケ科の淡水魚で、大きいものは1m以上にも達し、時にはネズミやカエルなどを捕食します。しかし現在はその数が非常に少なくなっています。環境省も釧路湿原の希少な種として「日本最大の淡水魚であるイトウ」を挙げています。実物の姿は、釧路市湿原展望台の有料展示(幻の巨大魚イトウの復元など)で確認できます。
イイジマルリボシヤンマ・エゾカオジロトンボ
連絡協議会は「釧路湿原は、トンボの宝庫」とし、中でも氷河期の遺存種であるイイジマルリボシヤンマ(トンボ目ヤンマ科)は7月〜10月上旬まで塘路湖周辺などで見られると案内しています。環境省は希少な種としてエゾカオジロトンボを挙げています。
氷河期の生き残りの植物
環境省によると、冷涼な気候の釧路湿原では氷河期時代の生き残りといわれるクシロハナシノブやハナタネツケバナ、キタサンショウウオなどが生息・生育しています。連絡協議会のデータブックでは、クシロハナシノブは高さ40cm〜80cmの多年草で6月〜7月に紫色の花をつけ、北海道自然歩道「霧と湿原の道」で見られます。ツルコケモモは温根内の木道などの高層湿原で見られるツツジ科の常緑小低木で、6月〜7月に淡紅色の小さな花、秋に赤い実をつけます。スゲ類が年々株を成長させた「ヤチボウズ」は各地の木道で見られます。
生き物ごとの「見られる時期」早見表
| 生き物 | 時期 | 場所の目安 | 出典 |
|---|---|---|---|
| タンチョウ | 繁殖期3〜4月、冬は給餌場 | 鶴見台・鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ(冬) | 連絡協議会 |
| アオサギ | 3月中旬〜9月頃 | 湿原や周辺の水辺、塘路湖畔のコロニー | 連絡協議会 |
| オオワシ | 冬鳥 | 水辺 | 連絡協議会 季節表 |
| オジロワシ | 留鳥 | 水辺 | 連絡協議会 季節表 |
| オオハクチョウ | 冬鳥 | 水辺(東エリア) | 連絡協議会 季節表 |
| シマリス | 4〜10月 | 細岡・温根内の木道 | 連絡協議会 |
| エゾシカ | 冬〜春は道路沿いにも | 森林と草原の境界 | 連絡協議会 |
| キタサンショウウオ | 卵塊は5月頃 | 湿原の水たまり | 連絡協議会 |
| イイジマルリボシヤンマ | 7月〜10月上旬 | 塘路湖周辺 | 連絡協議会 |
| クシロハナシノブ | 6〜7月開花 | 北海道自然歩道「霧と湿原の道」 | 連絡協議会 |
生き物を観察できる5施設
| 施設 | 所在地・電話 | 開館時間 | 休館日 | 料金 |
|---|---|---|---|---|
| 釧路市湿原展望台 | 釧路市北斗6-11 / 0154-56-2424 | 4〜9月 8:30〜18:00、10〜3月 9:00〜17:00 | 年末年始 | 大人480円・高校生250円・小中学生120円(1階は無料) |
| 温根内ビジターセンター | 鶴居村温根内 / 0154-65-2323 | 4〜10月 9:00〜17:00、11〜3月 9:00〜16:00 | 火曜・12/29〜1/3 | 無料 |
| 細岡ビジターズラウンジ | 釧路町達古武22-9 / 0154-40-4455 | 4〜9月 9:00〜18:00、10〜3月 10:00〜16:00 | 12/29〜1/3 | 無料 |
| 塘路湖エコミュージアムセンター「あるこっと」 | 標茶町塘路原野 / 015-487-3003 | 4〜10月 10:00〜17:00、11〜3月 10:00〜16:00 | 水曜・12/29〜1/3 | 無料 |
| 釧路湿原野生生物保護センター | 釧路市北斗2-2101 / 0154-56-2565 | 4〜10月 9:30〜16:30、11〜3月 9:30〜16:00 | 水曜・12/28〜1/4 | 無料 |
釧路・阿寒湖観光公式サイトによると、釧路市湿原展望台は1階が入場無料でショップやレストランがあり、2階からが有料展示です。湿原を再現するゾーンにはイトウなど湿原の動植物を復元した展示物が多数あり、3階展望室と屋上からは湿原や釧路の街、阿寒の山々を望めます。1周約2.5kmの遊歩道の途中にはサテライト展望台があり、右回りの約1kmはバリアフリーです。駐車場は普通車108台・大型バス7台・身障者専用3台で、JR釧路駅から車で約30分(阿寒バス鶴居線)、釧路空港から車で約18分です。釧路市在住の満65歳以上の方と、各種障がい者手帳をお持ちの方(引率者1名まで)は入館料が免除されます。
連絡協議会によると、温根内ビジターセンターにはバリアフリーの木道があり、車いすの無料貸出があります。細岡ビジターズラウンジは細岡展望台に隣接しJR釧路湿原駅から徒歩約5分で、写真展示と軽食・喫茶があります。塘路湖エコミュージアムセンターはJR塘路駅から徒歩10分です。環境省の釧路湿原野生生物保護センターでは、シマフクロウ・オジロワシ・オオワシなどの生態と保全の展示があり、リハビリ中のシマフクロウの様子をライブ映像で公開しています。展望台を車で回るなら湿原ドライブのモデルコースも参考にしてください。
観察のルールと外来種の問題
釧路湿原国立公園連絡協議会は利用者向けに次のように呼びかけています。「決められた木道以外を歩いたり、ゴミを捨てたりすることは、湿原に生息・生育する動植物に大きな影響を与えてしまいます」「野生動物にエサを与えることも厳禁です。人間になれた動物は、自分でエサをとることを忘れたり、車道にでてきて車にひかれたりしてしまいます」。キタサンショウウオの無許可の捕獲も禁止されています。なお、連絡協議会サイトでは2026年9月28日から温根内木道の改修工事に伴う通行規制が告知されているため、出発前に最新情報を確認してください。
在来の生き物を脅かしているのが外来種です。環境省北海道地方環境事務所の資料では、北海道では特定外来生物であるアライグマ、アメリカミンク、セイヨウオオマルハナバチ、ウチダザリガニ、オオハンゴンソウなどの拡大と生態系への影響が懸念されているとされ、釧路自然環境事務所は「特定外来生物アライグマに注意!」「特定外来生物ウチダザリガニ」のパンフレットを公開しています。釧路市も2026年10月にアライグマの注意喚起ページを更新しており、見分け方と通報先は釧路のアライグマ対策記事にまとめています。
よくある質問
Q1. 釧路湿原で出会いやすい野生動物は何ですか?
A: 連絡協議会のデータブックでは、キタキツネは湿原周辺で「かなり目にすることができる」、シマリスは4〜10月に細岡・温根内の木道で見られる、エゾシカは冬から春に道路沿いにも現れると説明されています。いずれもエサやりは厳禁です。
Q2. キタサンショウウオはどこで見られますか?
A: 姿を見かけることはまれで、5月頃に湿原の水たまりで青白い蛍光色の卵塊が見られます(連絡協議会)。釧路市の天然記念物で、許可なく捕獲することは禁止されています。
Q3. タンチョウは夏でも見られますか?
A: 連絡協議会によると道東地区に1,000羽程度が生息し、3〜4月に繁殖期を迎えます。冬は鶴居村の鶴見台や鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリで見られると案内されています。夏の観察適地は公式に明記がないため、詳しくはタンチョウの記事をご覧ください。
Q4. 無料で生き物の展示を見られる施設はありますか?
A: 温根内ビジターセンター、細岡ビジターズラウンジ、塘路湖エコミュージアムセンター、釧路湿原野生生物保護センターは無料です。釧路市湿原展望台は1階無料、2階以上の展示は大人480円です。
まとめ
釧路湿原には哺乳類39種・鳥類約200種・魚類38種・昆虫約1,100種が暮らし、国の特別天然記念物タンチョウ、日本最大の淡水魚イトウ、氷河期の遺存種キタサンショウウオやイイジマルリボシヤンマなど、ここでしか出会えない生き物がいます。見られる時期は種ごとに違うので、狙う生き物に合わせて訪問時期と施設を選び、木道以外を歩かない・エサを与えないというルールを守って観察してください。









